月夜の翡翠と貴方
「じゃあ、決まりね。報酬だけど、当然くれるのよね?」
口元の笑みを絶やさないミラゼが、ふふんと右手を腰に当てた。
「もちろんだ。金額はまた、終わってから決めてくれれば良い」
「馴染みだからって、容赦はしねーよ?」
ルトが明るさを取り戻した顔で、笑っている。
「はは。好きにしてくれ」
三人は幼馴染。
それだけあって、包む空気は柔らかかった。
「では、明日の朝、九時に西門へ来てくれ」
リロザの言葉と共に、解散した。
*
...誰か、助けて欲しい。
この、気まずく重たい空気を。
宿に戻ってから…いや、酒場を出てから、ふたりになった途端に、沈黙が下りた。
原因は、ルトだ。
何も喋らないのだ。
いつもなら、ルトがたくさん話す。
そこに私は時折言葉を挟むだけで、会話が成り立っているのはほとんどルトが喋るからである。
しかし、私が何度見上げようとも、彼はこちらを見ない。
前を向いていたり、街を見ていたり。
それは、宿に着いても変わらなかった。
今は、無言でさっさと浴室へ行ってしまった。