月夜の翡翠と貴方
「…いつ、ミラゼにきいたの」
何を、とは、聞かなくてもわかった。
「…昨日。酒場で、カウンターで」
ルトはこちらを見ない。
「俺が飲んでたときか」
「うん」
「……………………そ」
そこで、会話は途絶えた。
私は無言で、浴室へ入る。
扉をパタン、と閉める。
「…………………………」
怒っているのか。
悲しんでいるのか。
とにかく、もうルトのことを知りたいとは思わなかった。
知ってはいけない。
どうせなら、もっと責めてくれればよかったのに。
それなら、こんなに苦しくないのに。
知らなければ。
ルトに、いずれ捨てられることを、知らずにいれたのに…………
風呂から上がると、案の上ベッドの上にルトの姿があった。
静かな、夜だった。
*
朝起きてから、西門へ着くまでも、やはり会話はなかった。
朝になったらいつも通り、笑って『おはよ』と言ってくるルトが見れるのでは、と少しばかり期待したが、そうは行かないらしい。