月夜の翡翠と貴方


「…いつ、ミラゼにきいたの」


何を、とは、聞かなくてもわかった。

「…昨日。酒場で、カウンターで」

ルトはこちらを見ない。

「俺が飲んでたときか」

「うん」

「……………………そ」


そこで、会話は途絶えた。

私は無言で、浴室へ入る。

扉をパタン、と閉める。

「…………………………」

怒っているのか。

悲しんでいるのか。

とにかく、もうルトのことを知りたいとは思わなかった。

知ってはいけない。

どうせなら、もっと責めてくれればよかったのに。

それなら、こんなに苦しくないのに。

知らなければ。

ルトに、いずれ捨てられることを、知らずにいれたのに…………



風呂から上がると、案の上ベッドの上にルトの姿があった。

静かな、夜だった。





朝起きてから、西門へ着くまでも、やはり会話はなかった。

朝になったらいつも通り、笑って『おはよ』と言ってくるルトが見れるのでは、と少しばかり期待したが、そうは行かないらしい。

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