月夜の翡翠と貴方


「揃ったか」


リロザの言葉とともに、馬車に乗り込む。

リロザと私が馬車の中へ入り、護衛であるルトとミラゼが馬車の上に乗って、座った。

馬車の中には、ムクギも乗っている。

「出発だ」

リロザの言葉で、馬に鞭が打たれた。







馬車は、森の中を静かに進んでいた。


リロザが用意してくれていた朝食を、馬車のなかで食べ終わる。


「…あ、そうそうジェイドちゃん」


そう言うと、ミラゼは上から飛び下りて、私と話せるよう横の道を歩き始めた。

なんだろうかと思い、馬車の窓から顔を出す。

彼女のベストの裏側から見えたのは、何本も収納されたナイフ。

それに驚いていると、ミラゼがふふ、と美しく笑った。


「私、ナイフ使いなのよ。長剣は苦手でね。はい、これ、ジェイドちゃんに貸すわ」


収納されたひとつを取り出すと、ミラゼはそれを私へ差し出した。

窓から手を伸ばし、ナイフを受け取る。

「護身用に、ナイフが欲しいと言ってたでしょう」

「あ…ありがとうございます」

さすがに上等なナイフだ。

鞘から少しだけ出して、刃をのぞかせてみる。

きちんと研がれた銀色が、鈍く光った。


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