月夜の翡翠と貴方
「揃ったか」
リロザの言葉とともに、馬車に乗り込む。
リロザと私が馬車の中へ入り、護衛であるルトとミラゼが馬車の上に乗って、座った。
馬車の中には、ムクギも乗っている。
「出発だ」
リロザの言葉で、馬に鞭が打たれた。
*
馬車は、森の中を静かに進んでいた。
リロザが用意してくれていた朝食を、馬車のなかで食べ終わる。
「…あ、そうそうジェイドちゃん」
そう言うと、ミラゼは上から飛び下りて、私と話せるよう横の道を歩き始めた。
なんだろうかと思い、馬車の窓から顔を出す。
彼女のベストの裏側から見えたのは、何本も収納されたナイフ。
それに驚いていると、ミラゼがふふ、と美しく笑った。
「私、ナイフ使いなのよ。長剣は苦手でね。はい、これ、ジェイドちゃんに貸すわ」
収納されたひとつを取り出すと、ミラゼはそれを私へ差し出した。
窓から手を伸ばし、ナイフを受け取る。
「護身用に、ナイフが欲しいと言ってたでしょう」
「あ…ありがとうございます」
さすがに上等なナイフだ。
鞘から少しだけ出して、刃をのぞかせてみる。
きちんと研がれた銀色が、鈍く光った。