月夜の翡翠と貴方
「しっかりね」
そう言って笑うと、ミラゼはまた馬車の上へと飛躍した。
しばらく馬車に揺られること、数時間。
途中に休憩等も挟んだが、馬車の中ではリロザとムクギの会話を聞いているだけでも、全く退屈することはなかった。
馬車の上のふたりも、なにやら話をしているようだった。
そんな、昼も過ぎたころ。
突然、馬が大きく鳴いて、歩むのをやめた。
合わせて、馬車も大きく揺れる。
「……っどうした!?」
リロザの叫びと共に、馬車の上のふたりが、素早く地面へと降りた。
窓から見ると、馬の前に、怪しげな男がふたり、進路を塞いでいた。
「……横の崖から、下りて来ましたね」
ムクギが、右に見える崖に、鋭い視線を向ける。
左は木々が生い茂っているが、右は垂直にも近い傾斜の岩壁である。
しかし、その岩壁はさほど高くなく、直ぐにまた木々が生い茂っていた。