月夜の翡翠と貴方
第一章
出会い、碧色、奴隷
出会いは、突然だった。
*
「店主。花のように綺麗な女、いない?」
決まり文句のように、青年は何度目かになるその言葉を、茶化すように言った。
テントの横に座る若い店主は、青年を見上げいぶかしげに眉をひそめる。
「『花のように綺麗な女』…ですか」
「うん」
いない?と、もう一度店主に問う。
奴隷屋に美しい女などいるはずがない、と思いながら。
「私の目ではどの程度かわかりかねますので、実際に見ていただけますか」
そう言う店主は、慣れた手つきで古く汚れたテントの布を開き、中へ示す。
言われた通り、青年はテントの中へ入った。
テントの中は湿っぽく、埃臭い。
そして青年の目に映ったのは、数人の子供達。