月夜の翡翠と貴方


水が頬を伝い、ぽたぽたと滴った。


「…………ってぇ」


青年の声が、近い。

…嘘でしょう。

私は、取り返しのつかない状況に陥ったことを悟った。


…最悪だ。

私は、青年に馬乗りになっていた。

転んだ拍子で、彼のほうへ飛び込んでしまったのである。

目を開くと、青年の顔があとほんの少しというところにあった。


「……………!」


青年の目も、見開かれる。


あぁ…………どうして。




< 30 / 710 >

この作品をシェア

pagetop