月夜の翡翠と貴方


リロザが返事をしないでいると、男が苛立たしげな声を上げた。

「…あー!早く出て来いよ!」

馬車の中に、緊張が走る。

いつ、何が起こるかわからない。


「……………おい!」


そこで、男が一際大きな声を上げた。

すると、石壁から、ふたり男が勢いよく下りてくる。

「…!!」

その男達は、馬車の後ろに降り立った。

...まずい。

四方に、挟まれたのだ。


「…少し手荒だけど、許せよ」


その男の言葉と共に、空気が一瞬で変わった。


キィィィイン…!

前方で、剣の打ち合う音が聞こえ始める。

ムクギが、閉めても無駄だと判断したのか、窓のカーテンを開けた。

ルトと、男だ。

ルトは西門へ向かう途中、鍛冶屋で剣をひとつ購入していた。


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