月夜の翡翠と貴方
そのときだけ、剣を扱うのか、と思わず出た問いに、答えてくれた。
必要なときだけ、と。
ー…ガン!
「!」
驚いて右横を見ると、後方にいた男が、馬車の扉越しにガラスを叩いている。
「………チッ」
舌打ちをしたムクギが、扉を開け外へ出た。
鞘から剣を抜き、扉の前で応戦を始める。
一気に、焦りが増した。
案の上、左の窓も、別の男が叩き始める。
馬車内は狭い。
私の真横で、扉越しに男が迫っている。
「…ジェイドさん!」
リロザが、震える手で短剣を握りしめている。
...道中で、彼に剣のたしなみはあるのか、と聞くと、ムクギが黙って首を横に振った。
あまりリロザに、期待は出来そうにない。
…ガチャガチャン!
男が、無理矢理外から扉の鍵を壊し始めた。
「……………っ」
冗談じゃない。
息を飲んだ瞬間、男の顔が激痛に歪んだ。