月夜の翡翠と貴方
そして、地面に崩れ落ちる。
「!?」
驚いて前方を見ると、息を切らしたミラゼが、男にナイフを飛ばしていた。
助かった。
ミラゼも前方で別の男と戦っていたのに、こちらに気づいてくれたのだ。
「っ……くそが!」
脇腹にナイフを刺されたまま、男がミラゼに飛びかかる。
その手に持った短剣の刃先を、ミラゼめがけて。
彼女はそれを、綺麗にかわしてゆく。
なかなか当たらないことで、男の顔に苛立ちが見え始め、短剣をがむしゃらに振り回し始めた。
「芸がないわね」
そこで、ミラゼがナイフを飛ばした。
今度は、反対の脇腹だ。
「………がっ……!」
痛みに耐えかねた男が、倒れる。
さすがだ。
ーーーギィイン!
「…………! ルト!」
ミラゼが、男とルトが剣を打ち合っているほうを見て、叫んだ。
窓から前方の様子を見ると、ルトの剣が、地面に突き刺さっている。
男が、剣を持ってにやにやと笑っていた。