月夜の翡翠と貴方


そして、地面に崩れ落ちる。


「!?」


驚いて前方を見ると、息を切らしたミラゼが、男にナイフを飛ばしていた。

助かった。

ミラゼも前方で別の男と戦っていたのに、こちらに気づいてくれたのだ。

「っ……くそが!」

脇腹にナイフを刺されたまま、男がミラゼに飛びかかる。

その手に持った短剣の刃先を、ミラゼめがけて。

彼女はそれを、綺麗にかわしてゆく。

なかなか当たらないことで、男の顔に苛立ちが見え始め、短剣をがむしゃらに振り回し始めた。


「芸がないわね」


そこで、ミラゼがナイフを飛ばした。

今度は、反対の脇腹だ。

「………がっ……!」

痛みに耐えかねた男が、倒れる。

さすがだ。


ーーーギィイン!

「…………! ルト!」

ミラゼが、男とルトが剣を打ち合っているほうを見て、叫んだ。

窓から前方の様子を見ると、ルトの剣が、地面に突き刺さっている。

男が、剣を持ってにやにやと笑っていた。


< 304 / 710 >

この作品をシェア

pagetop