月夜の翡翠と貴方
ルト…!
剣が、彼の頭上へ振り下ろされる。
「………っ」
寸前で避けたルトの体が大きく動き、態勢を変えた。
地面に手をつくと、逆立ちをした状態でルトは男の首を真横に勢いよく蹴った。
「………ぐはっ」
予想していなかった攻撃に、男が剣から手を離し、地面に叩きつけられる。
「…!」
ー…ああ、そうか。
ルトは、『必要なときにしか』剣を使わない。
つまりは、武術や体術に長けている、ということだ。
ルトが、息を切らして男を見下ろす。
男は、憎々しげに彼を睨んだ。
そして、走り出す。
その先にいたのは…
「ムクギ!」
リロザが、馬車の中で思わず叫んだ。
ひとり、馬車の間近で剣を打ち合っていたムクギに、男が殴りかかる。
「!!」
ミラゼがナイフを飛ばすが、ムクギを避けた軌道のために当たらない。