月夜の翡翠と貴方


彼の瞳に映っているのは、紛れもない自分の姿。

フードは落ち、水を被った碧色の髪は、惜しげもなく晒され、強い日差しにキラキラと輝いている。

そして、必死に隠して来た素顔も、青年の目の前にあった。


…どうして、神様はこんなにも意地悪なのだろう。

少しくらいは、見逃してくれたって、いいじゃないか。


青年の目は、私の顔を無遠慮に見続けている。

もはや、隠す気すら起きなかった。




ファナの素顔は、まさに青年の言った『花のように』美しかった。

目鼻立ちは綺麗に整えられ、欠けているところなどひとつとしてない。

真白く、不要なものなど全くない綺麗な肌。

ピンク色の艶やかな唇。

橙の大きな瞳。


誰が見ても、奴隷とは思えない美しさだった。



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