月夜の翡翠と貴方
いや、それどころか、男達との戦闘後の馬車の空気は、最悪だった。
異様に、ルトが不機嫌だったのである。
お陰で、恐怖を隠しきれないリロザはひとまずとして、私とミラゼは少し気まずい思いをしていたのだ。
今こそ、普通に笑っているが。
それにしても。
「……………………」
じっと、彼を見つめる。
しかし、気づいているだろうにこちらを見もせず、彼はフォークにハンバーグの一切れを刺した。
…やっぱり。
正面の席だというのに、ルトと全く目が合わない。
完全に、私の存在を無視している。
…まだ、怒っているのか。
溜息をつきそうになる。
食事が終わっても、ルトは何も言わず部屋へ戻ってしまった。
私とルトの、ふたり部屋。
正直、部屋へ行きにくいのだが。
「ジェイドちゃん」
振り返ると、ミラゼが心配そうにこちらを見ていた。
「木箱の見張り、私とルトで交代ですることになったの。今から深夜まで私の番だから、一緒に見張らない?」
つまりは、一緒にいようか、ということ…と受け取っていいのだろうか。