月夜の翡翠と貴方


「あ…じゃあ」

きっと、私とルトとの間に流れる空気に気づいて、気をつかってくれているのだろう。

お言葉に甘えさせてもらう。

返事をすると、ミラゼはにっこりと笑った。





リロザはムクギと同じ部屋なので、ミラゼはひとりで部屋を使う。


部屋に入ると、テラスのガラス扉から月明かりが射しているのが見えた。

その明かりだけが暗い部屋内を照らす中、ミラゼは扉を開けテラスに出た。

私もついていき、ミラゼの横に立つ。

冷たい風が、頬に当たった。


「酔いを覚まさなきゃね」

ミラゼがふふ、と笑う。

涼しい顔をして、実は酔っていたらしい。


ミラゼは前を向くと、少し息をついて、口を開いた。

「ごめんなさいね」

そう言って、こちらへ気遣うような笑みを見せる。

「え……なにが、ですか」

「…ルトに、依頼屋の事…ジェイドちゃんが知ってる事、言っちゃって。それで今、ふたりはあんな感じなんでしょう」

ミラゼは、申し訳なさそうな顔をしていた。




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