月夜の翡翠と貴方
「あ…じゃあ」
きっと、私とルトとの間に流れる空気に気づいて、気をつかってくれているのだろう。
お言葉に甘えさせてもらう。
返事をすると、ミラゼはにっこりと笑った。
*
リロザはムクギと同じ部屋なので、ミラゼはひとりで部屋を使う。
部屋に入ると、テラスのガラス扉から月明かりが射しているのが見えた。
その明かりだけが暗い部屋内を照らす中、ミラゼは扉を開けテラスに出た。
私もついていき、ミラゼの横に立つ。
冷たい風が、頬に当たった。
「酔いを覚まさなきゃね」
ミラゼがふふ、と笑う。
涼しい顔をして、実は酔っていたらしい。
ミラゼは前を向くと、少し息をついて、口を開いた。
「ごめんなさいね」
そう言って、こちらへ気遣うような笑みを見せる。
「え……なにが、ですか」
「…ルトに、依頼屋の事…ジェイドちゃんが知ってる事、言っちゃって。それで今、ふたりはあんな感じなんでしょう」
ミラゼは、申し訳なさそうな顔をしていた。