月夜の翡翠と貴方


むくむくと、続きを聞きたいという感情が湧き上がる。

「……………………」

なんの返事も出来ない私を見て、またも意味深にミラゼが微笑んだ。

そして、口を開く。

耳を…塞ぎたい。

ミラゼは、「あの子はね」と言う。


「……受けた依頼は、どんな内容であれ躊躇いもせず実行するわ。淡々とね。…それが、殺しでもなんでも」


最後の言葉が、私のなかに重く響いた。

しかし、驚いたのも一瞬、私の心にすっと入っていく。

頭に浮かんだ彼の、あの深緑が濃くなった。


「…………………」


何も言えずに俯く私に、ミラゼはただただ話を続ける。

「冷酷なのよね。どんな依頼も、躊躇いなく、そして鮮やかに実行する。失敗なんて滅多にないわ。その実績は、同業のなかでも有名でね」

…ああ。

「でも、明るい顔したルトも、本物のルトなのよ。誰にでも優しい、愛されるルトも。ただ…少し、仕事とのギャップが凄いわね」

わかってしまった。

『ルト』という男の、性格が。

「もとの性格が明るいから、依頼主とも上手くやれるでしょう。本当に、あの子は依頼屋に向いているわ」

苦しい。



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