月夜の翡翠と貴方
「まぁ、幼馴染してるって言っても…私もルトの事はまだまだよくわからないんだけどね。……あら、ジェイドちゃん、大丈夫?」
あくまで明るい、ミラゼの声がする。
私は小さくゆっくりと息を吐くと、顔を上げた。
「……大丈……………」
「人のいないとこで…なに人の事をペラペラと」
部屋の扉のほうから。
驚いてそちらを見ると、扉に背を預けて、腕を組み静かにこちらを見つめているルトの姿があった。
....嘘。
い、いつから…
「あら、やだ。相変わらず気配消すのが上手いんだから」
ミラゼはさして驚く様子もなく、ルトのほうを見て笑っている。
…まさか。
ルトは、ふぅ、と息をつくと、静かにこちらへ歩いてきた。
怒っているのか、呆れているのか、よくわからない顔をしている。
どうしよう。
ルトは私達がいるすぐ近くまで来ると、呆れたようにミラゼを見た。
「…あんまり、余計なことするなよ」
不機嫌に低くなったルトの声すらも、彼女は楽しんでいるように笑った。
「やーね。ルト、顔怖いわよ」
そう。
楽しんでいるのだ。
ミラゼはきっと、わかっていた。
ルトが、私達の会話に気づいてしまうこと。
もうなんだか、怒る気にもなれない。
ミラゼは、まるでおもちゃを見つけたかのように、私とルトの成り行きを面白がって見ているのだ。