月夜の翡翠と貴方
私は唇を噛んで、彼の視線に耐えた。
…必死に、隠してきたのに。
私はこの碧色の髪を濡らして、頬から水を滴らせている。
…いや、滴っているのは、水だけではないのかもしれない。
「…………泣くなよ…」
ふと、私の顔を驚き見ていた青年の顔が、曇った。
「…………っ」
私はいつの間にか、大きな橙の瞳から大粒の涙を溜め、溢れさせていた。
「…ごめん」
青年は、謝る。
まるで本当に、そう思っているみたいに。
奴隷の私へ、彼は眉を下げて、言うのだ。
「ごめん」
橙の瞳から溢れる涙を、その指が掬う。
微かに、指と肌が触れた。
「………どうして、謝るんですか…」
頬を涙で濡らした私は、それでも彼の顔を見た。
「……ごめん」
「…………謝らないで、下さい」
私が、転んだだけなのだ。
彼が謝る必要はない。
きっと、罰が当たったのだ。
エルガのところで、長い間幸せに浸り過ぎたから。
青年の甘さに、油断したから。
全て、私が悪い。