月夜の翡翠と貴方
どこか、我に返ったような表情。
え…今度は、なんだ。
戸惑う私をよそに、ルトは目線を下へと向ける。
そして、低い声で一言。
「…ごめん」
え………
それだけ言うと、無言でベッドを降りていく。
「…外、出てくる」
ええっ………
そして、顔を赤くしたままの私を残して、彼は静かに部屋から出て行った。
*
気づくと、朝になっていた。
テラスから、朝の光が射している。
寝台から起き上がり、ぼうっとする頭を起こす。
「…………………」
隣を見るが、ルトの姿はない。
…きっとあれから、部屋へ戻らずにミラゼと見張りを交代したのだろう。
思わず、はぁ、と溜息が出た。
…なんだったんだ、昨日のは。
思い出すだけで死にたくなる。
大袈裟かもしれないが、本当にそのぐらいに恥ずかしい。
しかも、突然謝ってきたと思ったら、そのまま部屋を出ていってしまった。
本当に何だったんだろうか。
あのあと私がしばらく眠れなかったのは、ルトのせいだ。