月夜の翡翠と貴方


どこか、我に返ったような表情。


え…今度は、なんだ。

戸惑う私をよそに、ルトは目線を下へと向ける。

そして、低い声で一言。

「…ごめん」

え………

それだけ言うと、無言でベッドを降りていく。


「…外、出てくる」


ええっ………


そして、顔を赤くしたままの私を残して、彼は静かに部屋から出て行った。





気づくと、朝になっていた。

テラスから、朝の光が射している。

寝台から起き上がり、ぼうっとする頭を起こす。


「…………………」

隣を見るが、ルトの姿はない。

…きっとあれから、部屋へ戻らずにミラゼと見張りを交代したのだろう。

思わず、はぁ、と溜息が出た。


…なんだったんだ、昨日のは。


思い出すだけで死にたくなる。

大袈裟かもしれないが、本当にそのぐらいに恥ずかしい。


しかも、突然謝ってきたと思ったら、そのまま部屋を出ていってしまった。

本当に何だったんだろうか。

あのあと私がしばらく眠れなかったのは、ルトのせいだ。


< 328 / 710 >

この作品をシェア

pagetop