月夜の翡翠と貴方
「…………うん。これは、別のことで謝ってる」
彼の顔は、申し訳なさそうに瞳を揺らしていた。
長いまつげが、影を落としている。
私はその瞳を見つめて、ああ、綺麗だと思った。
…それは、深い緑色をしていた。
私の瞳に、青年の瞳が映る。
青年は涙を掬いながら、顔を上げた。
その深緑の瞳が、私の瞳をとらえる。
…強い。
強く、真剣な瞳だった。
「ごめん」
青年は、繰り返し謝る。
そして、まるで宣言するように、言う。
「ごめん。俺は、君を買う」
彼の言葉に、思わず笑いそうになってしまった。
「ごめん」
「………謝らないで下さいよ………」
相変わらず頬を濡らす涙は止まらないが、彼の言葉でなにもかもどうでもよくなってくる。