月夜の翡翠と貴方
………またも、ルトは私を避け始めたのだ。
今度は遠慮なく、本人の前で溜息をつかせてもらった。
正直面倒くさい。
まだ、何か考えているのだろうか。
あんな苦しい顔をして、悩んでいるのではないか。
思えば思うほど、自分がルトのことを心配しているように感じて、嫌になる。
…私、何か気に障ることをしただろうか。
昨日の夜初めて知った、ルトの『想い』。
ルトが、あんなに取り乱したのは初めてだ。
自嘲するような笑みも、初めて見た。
彼は、依頼屋。
淡々と仕事をこなしていく、冷酷な人。
…今回ルトが受けたのは、どんな依頼なのだろう。
私は、どう絡んでいるのか。
わからないから不安で、わからないから安堵している。
終わりがわかっているのに、終わりの見えない『今』に安堵している。
怖く、恐ろしい私の感情。
いつか手放される、この体。