月夜の翡翠と貴方
…ルトは、今なにを考え、何を見ているのだろう。
*
着いたのは、森を抜けて町の郊外に並ぶ店と店の間にある、狭い隙間に埋め込まれた扉の前だった。
「…え、ここ?」
ルトが馬車の上から降りて、古ぼけた扉を見つめる。
「ここだ」
リロザは馬車から降ると、堂々とした態度で扉の前に立った。
脇には、しっかりと木箱が抱えられている。
ここに来るまでなにもなかったせいか、リロザの顔には貴族としての自信が戻っていた。
「では、行くぞ」
リロザが扉を開く。
すると、地下らしき階段が目の前に現れた。
下は暗く、なにがあるのかわからない。
「すげぇな」
ルトが感心したように声を漏らした。
「知り合い間の店だからな」
確かに、訪れた客を歓迎しようという気が全くないのがわかる。
リロザを先頭に、ルト、私、ミラゼ、ムクギの順に、階段を降りていった。