月夜の翡翠と貴方
…知られていたのだ。
取引の話はおろか、この店の場所まで。
ミラゼが、懐からナイフを取り出した。
それを見た男は、リロザの襟をぐいっと掴み、自らに引き寄せる。
片手には、小型のナイフ。
「ねえちゃんがそれをこっちに投げたら、同時に俺もこの坊ちゃんの首を引き裂くぞ」
リロザが、ひっと顔を青ざめさせた。
ミラゼが鋭く男を睨む。
「…つくづく、最悪な連中ね。やり方が汚いわ」
「…そんなに、人質とるのが好きか」
ルトが冷めた目で言うと、男はハッと鼻で笑った。
「こっちはなぁ、手段なんか選んでられねぇんだよ。昨日は仲間がやられちまったらしいが、今日はそうはいかねえよ」
やはり、昨日の連中の一派らしい。
昨日ルトが男達に、仲間の居場所を問いただしたが、全く口を割らなかった。
部屋の奥から、男の仲間らしき奴らが、ぞろぞろと出てくる。