月夜の翡翠と貴方


…知られていたのだ。

取引の話はおろか、この店の場所まで。


ミラゼが、懐からナイフを取り出した。

それを見た男は、リロザの襟をぐいっと掴み、自らに引き寄せる。

片手には、小型のナイフ。

「ねえちゃんがそれをこっちに投げたら、同時に俺もこの坊ちゃんの首を引き裂くぞ」

リロザが、ひっと顔を青ざめさせた。

ミラゼが鋭く男を睨む。

「…つくづく、最悪な連中ね。やり方が汚いわ」

「…そんなに、人質とるのが好きか」

ルトが冷めた目で言うと、男はハッと鼻で笑った。


「こっちはなぁ、手段なんか選んでられねぇんだよ。昨日は仲間がやられちまったらしいが、今日はそうはいかねえよ」


やはり、昨日の連中の一派らしい。

昨日ルトが男達に、仲間の居場所を問いただしたが、全く口を割らなかった。

部屋の奥から、男の仲間らしき奴らが、ぞろぞろと出てくる。


< 335 / 710 >

この作品をシェア

pagetop