月夜の翡翠と貴方


ルトとミラゼが仕方なく、こちらへ戻ってきた。

後方からどんどん出てくる野蛮な風貌の男達に、リロザは開いた口が塞がらなくなっている。

何人…いや、十数人という人数の男が、店内に入り、私達を囲んだ。

どうやら、この店自体を占拠されていたらしい。

ルトが私の手を掴み、握りしめた。

そして、小声で言う。


「…お前は、急いでここから出ろ。馬車の中で待っとけ」


…仕方、ないとは思う。

ここで私は、もはや邪魔でしかないのだから。


男たちが、にやにやとした笑みで私を見てくる。

...それに私のような女は、彼らにとって格好の獲物なのだ。

わかった、という返事の代わりに、ルトの手を握り返した。

それと同時に、一気に男達が襲いかかってきた。


「………っ」

急いで、扉の方へ向かう。

逃げるのは得意な方だ。

道を阻む男達の脇をすり抜ける。

ミラゼが、私を避けてナイフを飛ばす。

後ろで、男の呻きが聞こえる。


< 336 / 710 >

この作品をシェア

pagetop