月夜の翡翠と貴方


しかし、扉の前まで来た時、目の前に大きな図体の男が立ちはだかった。


「行かせねぇよ、嬢ちゃん」


そう言って、こちらを見下ろしてくる。

思わず舌打ちをしたくなった。

ミラゼからもらったナイフを握りしめる。

...どうする。

ここで、使うか。

すると、横からナイフが飛んで来た。

ミラゼだ、と思った瞬間。

ガキィン!

男が咄嗟に出した短剣が、派手な音を立ててミラゼのナイフを跳ね返したのだ。


「……………!」


そんな。

この男、動体視力が桁外れている。

予告なく飛んで来たナイフを、咄嗟に短剣を出して打ち返すなんて。

振り返りミラゼを見るが、彼女も他の男の相手をするので精一杯の様子だ。

もう、こちらへナイフを飛ばすことは出来そうにない。

ルトも、剣を使いながら応戦しているが、こちらを向く余裕すらない。

なんせ、数が違う。圧倒的に、こちらに向かって来る人間の数の方が多いのだ。

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