月夜の翡翠と貴方
その様子を見て、青年は少し眉を下げ、困ったような顔をした。
「ごめんな」
一言そう言うと、青年は立ち上がった。
そして、テントへ向かって歩いていく。
きっと、エルガのところへ行くのだろう。
私を買うと、言いに。
私は、しばらくその背中を見ていた。
この隙に逃げるという可能性は、考えないのだろうか。
最も、逃げるだけの気力など残っていないが。
ふと下を見ると、バケツの水と涙で濡れた地面が、視界広がっていた。
濡れた碧色の髪が、輝いている。
…まさに出会いは突然に、舞い込んできて。
私は貴方の、奴隷となった。