月夜の翡翠と貴方
「くそが…っ!」
リロザに向かって、男が怒りで拳を振り上げた。
急いでリロザのもとへ行こうと足を動かすが、間に合わない。
リロザが、恐怖に目をつむる。
男の拳が当たる、寸前で。
「…っくそはお前だろーが!」
ルトの、足が。
男の脇を、思い切り蹴った。
そのまま、男が床に倒れこむ。
……あ。
その拍子に、男の手から木箱が離れた。
宙を舞う、木箱。
私は、反射的にその木箱の真下へ走った。
上だけを見て、夢中で足を動かす。
ジャキッ…
途中、後ろで髪が切られる音がした。
「…待ちやがれ!」
男の怒声が聞こえる。
しかし、構わず手を伸ばす。