月夜の翡翠と貴方
未だ階段を降りる途中で立ち止まっている私は、目を見開く。
....いつの、間に。
すると、二階から男が飛び降りてきた。
「!」
そして、私の前で綺麗に着地する。
男が、口元に笑みを浮かべて、階段を上がってきた。
「ジェイド!」
こちらに気づいたルトが、ミラゼの横で叫んだ。
ミラゼのナイフが、男めがけて飛んで来る。
しかし、男はするりとかわし、ナイフは壁に突き刺さった。
着実に、男が近づいて来る。
男が階段を一段上がるごとに、私も一段後ろへ上がる。
「待てよ!」
剣を持ったルトが、階段を上がってきた。
男が、そちらへ振り返る。
その瞬間、私は後ろへ走り出した。
とにかく、逃げないと。
走り出した私に気づいた男が、追ってくる。
「………っ」
走る、走る。
けれど、やはり男の脚力には敵わない。
すぐに至近距離へ迫られた。
咄嗟に、近くの部屋へ入る。
行き止まりだというのに、こういう時人間は冷静な判断に欠けてしまう。
入ってから後悔した。