月夜の翡翠と貴方
その部屋には、いくつもの荷物が並べられていた。
商品庫かなにかだろうか。
男が、じりじりと迫って来る。
木箱を、握りしめる。
…壁へ、追い詰められた。
「…観念したら、嬢ちゃん」
口元の笑みを絶やすことなく、男は私を見下ろした。
顔の横に、男の手がつかれる。
「………………」
....さて、どうしようか。
私は無言で、男を見つめ返した。
怯まない、真っ直ぐな瞳で。
「…………………」
フ、と男が笑った。
「ジェイド!」
扉の近くで、ルトの声がした。
見ると、ルトの他にミラゼとリロザもいる。
男によって動けない私を見て、ルトが鋭く男を睨んだ。
そして部屋へ入ろうとする彼に、男が「待てよ」と言った。
「あんたらが部屋に入った瞬間に、この子殴るよ」
ルトの足が、ぴたっと止まる。
…殴るぐらいなら、どうということもないのに。
一発二発殴られたぐらいで、そんなにすぐ死にはしない。
それにしても、こいつらは人質を取るのがよっぽど好きだな、と呑気な考えが浮かんだ。