月夜の翡翠と貴方
第四章
矢、境界線、すれ違い
頬へのキスや、
首筋へのキス。
容易く握る手も、
触れる碧色も。
決定的な何かは残さない。
唇を重ねないのは、
頬を紅く染めるようになった翡翠葛のためなのか、
…はたまた、自分のためなのか。
*
「ルト、お酒飲んじゃ駄目だよ」
今、まさに酒の入ったカップに口つけようとしているルトに、そう言った。
「あ?…あー…」
思い出したように、ルトがテーブルにカップを置く。
リロザからの依頼による遠出から、街に帰ってきた夜。
疲れているだろうに、休むことなくミラゼは酒場を開け、ルトとリロザも集まった友人達と談笑を楽しんでいる。
私とルトは、明日の朝この街を出発する予定だ。