月夜の翡翠と貴方
それにしても、これだけの大金をたかが奴隷につぎ込むとは、信じられない。
青年の横を見ると、ファナも小袋の派手な音に勘付いたのか、ぽかんと口を開けて見ていた。
恐らく、今まで自分につけられた最高値なのだろう。
「おかげで望みの女が手に入ったんだ。そのくらい妥当な金額だよ」
特に気取る風もなく、青年はあっけらかんと言った。
…望みの女、か。
「……もう、出発されるのですか」
訊くと、青年は空を見上げた。
空は、雲一つない晴天である。
「…そうだな。まだ昼だし。すぐ出発するよ」
「…そうですか」
…本当に、奴隷というのはいつ売れるかわからない。