月夜の翡翠と貴方


「後悔するのは、あなたでしょう……」


どこか憂いを滲ませたミラゼの言葉は、誰に届くわけもなく、夜風にさらわれて消えた。





翌日の朝、南門から出発する私たちを見送るため、ミラゼと酒場で知り合った数人が来てくれた。


友人達がルトと話している間、私はミラゼに呼ばれた。

「ジェイドちゃん」

「はい」

色々とミラゼには言いたいことがあるように思えるが、言っても仕方ないことはわかる。

ルトから離れ、そばにいくと、ミラゼは懐から鞘に収められたナイフをひとつ取り出した。


「これ、ジェイドちゃんにあげるわ」


「え…」

差し出された上等なナイフに、受け取るのを躊躇う。

「使うときが来るかはわからないけど、またこれで自分の身を守ってちょうだい」

ふふ、と優しい笑みを浮かべるミラゼ。

「………………」

いいのだろうか。

私は、これを受け取って。

「ね」

ミラゼの優しく、それでいて有無を言わさない声色に、私はおずおずとそれを受け取った。



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