月夜の翡翠と貴方


「ありがとうございます…」

「いいえ。ルトをよろしくね」

ミラゼは、にっこりと美しく微笑む。

小さな装飾の光る鞘の冷たさが、手のひらに伝わった。

...私はこれを、上手く使うことが出来るだろうか。

一礼すると、ルトが私を呼んだ。

出発するらしい。


「あ、ジェイドちゃん」

ルトのところへ向かおうとすると、ミラゼに呼び止められた。

振り返ると、彼女は私の耳元に唇を寄せる。

そして、囁いた。


「ルトはあれでも女の扱いに慣れてるわ。いつ手を出してくるかわからないから、気をつけて?」



「…………!?」

驚いて目を丸くすると、ミラゼは意味深に微笑んだ。


「あ。ひょっとして、もう出されてるのかしら、手」

「な……っ…」

「ふふ」


それは楽しそうに笑う彼女に、再び溜息をつきたくなった。

ああ、やはりミラゼは掴めない。


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