月夜の翡翠と貴方


それも全てオリザーヌ家のせいですわ、と唇を尖らせて、女が言う。

オリザーヌ家、というのが、ディアフィーネの領主というのはわかった。

しかし、その先が知りたい、と私は思った。


「オリザーヌ家…とは…」


私の言葉に、待ってましたと言わんばかりに、女は声をひそめて愚痴を零し始めた。


「半年前に、前領主を失脚させて、半ば無理矢理その地位を奪った、横暴な貴族家ですわ」

彼女は言葉に、嫌悪を滲ませる。

「村の上層に、前領主が建てていた邸の他に新たに建物を建てて、自分が贅沢をしたいがために、村人からの取り立ても増やして。もとから貧しかったディアフィーネの村は、もっと貧しくなったわ」

お陰でこの有様よ、と村を見渡した。

「近くに関所があるから、そこを通る商人達と交流を持って、なんとかやっていってるけどね。医者がいないから病死するものが急増して、村はほとんど機能しなくなったわ」

女の話に、唖然とした。

....こんな村が、あって良いのか。


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