月夜の翡翠と貴方


国は…この辺りを治める領主の総監督を務める爵位の人間は、何をしているんだ。


「…それで…………」

辺りを見回したルトの腕を見て、女が目を見張った。

そして、気の毒そうにめを細める。

「…残念だけど…ここに医者はいないのよね」

「…私達も充分な治療をしてあげられる余裕もなくて…ごめんなさいね」

申し訳なさそうに言う彼女達に、ルトは「大丈夫ですよ」と優しく笑った。

「お気遣いだけいただきます。ありがとうございます」

その言葉に、女達は嬉しそうにはにかんだ。

そして、用事があると言って、ルトに手を振って去っていった。


「…よかったね」

「ん?何が?」

「...いや、なんでも」

思わず出た皮肉が、私の覚悟の浅さを表している。

しかし、ルトは今こそ平然としているが、その実、傷は酷い。

腕に巻かれた布は、朝見たときよりも赤く染まっていた。


「…本当に、大丈夫?」



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