月夜の翡翠と貴方
ルトを見上げ尋ねると、ばち、と目が合った。
....いつもなら、そんなことを気にするはずもないのに。
ルトが、私の瞳からばっと目を逸らしたのだ。
思わず一瞬、目を見開く。
…『ルトが』、というのは珍しい。
驚いたことを悟られないよう、すぐに普段の表情に戻した。
落ち着け。
…普通に。普通に。
きちんと立場をわきまえて、何が当たり前なのかを考えるのだ。
しかし、こちらの気持ちとは裏腹に、ルトの声色と表情は私の心をかき乱すものだった。
「……や、大丈夫だから。早く、宿行こう」
私の視線から逃れるかのように、ぱっと前を向く。
なんだ?
何故、ルトが。
歩き出した彼を追いかけようとして、その腕に巻かれた布がほどけそうになっているのに気がついた。
「…ルト、布がほどけー…」
ルトの手を掴もうとした、瞬間。
......ばっ、と。
「!」
ー…手を、振り払われた。
驚く私を見て、ルトまでも何故か驚いた顔をする。