月夜の翡翠と貴方
「あ…ごめん」
「…………」
「ごめん!」
何も言えないでいる私に、ルトが慌てて謝ってきた。
....拒絶、された?
思いの外、ショックを受けている自分に気づく。
いや、主人にこんなふうに…これよりずっと酷く扱われたことなんて、何度もあるのに。
ルトに会ってから、こんなふうにされたことがないからだ。
…驚いただけ。きっと、それだけ。
「…大丈夫。私こそごめん。突然触れて」
「いや、今のは俺が悪かった。ごめん。悪気とか、深い意味はない」
「うん」
…わかっている。
けれど、無意識というのが、いちばん本音を表しやすいのだ。
再び、気まずさを漂わせながら歩く。
ルトはきっと、後悔してくれているに違いない。
…私が、気持ちを抑えるだとか、そんな問題でもないのかもしれない。
結局は、ルトに拒絶されれば、それまでのこと。
ルトがもし、心の奥底で、私への『拒絶』の気持ちがあるのだとしたら…………
私が先に、それを汲み取るべきではないのか。