月夜の翡翠と貴方


ルトは優しいから、そんな気持ちを抑えて私に接してくれているのかもしれない。

そうだとしたら、私がそれを拒絶する形にしたほうが、きっとルトも気が楽なのではないか。

考えが渦をまいて、私を支配する。

黒々とした想像の渦に巻かれている心は、何故か少しだけ苦しかった。






気まずさによって、何も話せないなかで、教えられた道を歩く。

きっと、もうすぐだ。

ちら、と見上げると、辺りの村の様子に目を向けるルトの顔が見えた。

先ほどから、こちらを見ず、話さず。

溜息をつきたくなる衝動を抑え、私も辺りを見回す。

そこで、道を確認するためにルトが立ち止まった。

二手に別れた道は、やはり荒れた草花が咲き、人が住んでいるのかさえわからない古ぼけた民家が見える。

もう、見慣れてしまった光景である。


すると、その民家と民家の間から、女のか細い声が聞こえた。


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