月夜の翡翠と貴方
ルトは優しいから、そんな気持ちを抑えて私に接してくれているのかもしれない。
そうだとしたら、私がそれを拒絶する形にしたほうが、きっとルトも気が楽なのではないか。
考えが渦をまいて、私を支配する。
黒々とした想像の渦に巻かれている心は、何故か少しだけ苦しかった。
*
気まずさによって、何も話せないなかで、教えられた道を歩く。
きっと、もうすぐだ。
ちら、と見上げると、辺りの村の様子に目を向けるルトの顔が見えた。
先ほどから、こちらを見ず、話さず。
溜息をつきたくなる衝動を抑え、私も辺りを見回す。
そこで、道を確認するためにルトが立ち止まった。
二手に別れた道は、やはり荒れた草花が咲き、人が住んでいるのかさえわからない古ぼけた民家が見える。
もう、見慣れてしまった光景である。
すると、その民家と民家の間から、女のか細い声が聞こえた。