月夜の翡翠と貴方
「…………?」
気まずさからか、私を気にしない…もとい、私を見ようとしないルトからコソ、と離れ、声がするほうへ近づく。
どんどん大きくなっていく声は、悲鳴にも似た叫び声だった。
同時に、男の声がいくつも重なって聞こえる。
話の内容はわからないが、数人の男の声の隙間から、女の抵抗するような荒げられた声がした。
あちらに気づかれないよう隠れて近づき、少しだけ見えたのは、男が何人も何かを囲うようにして立っている様子だった。
その顔には、卑しいほどにニヤリとされた笑みが浮かんでいる。
すぐさま状況を察した私は、物音を立てないようにルトのほうへ向かった。
「……っルト」
小声で、彼を呼ぶ。
切羽詰まった声だったからか、ルトは訝しげな顔をしてこちらを見た。
「どした?」
「…あ、あそこで…女の人が、たくさんの男に囲まれてて....っ」
指差したほうを見たルトは、すぐにそちらへ近づく。
その背の後ろから、ついていった。