月夜の翡翠と貴方
近づくにつれ、ルトも聞こえてくる不審な声に気づいたのか、右腕で剣の鞘を抜いた。
「おい」
男達の真後ろに来ると、ルトが低い声でそう言った。
振り返った男達を見て、やはり、と思う。
案の定、円を描くように囲われた中心には、若い女が怯えた顔をして、うずくまっていた。
「あん?なんだ、にーちゃん」
見るからに、何処かの逆賊か山賊のような風貌の男達。
突然登場したルトに、リーダーらしき男が不機嫌な声を出した。
「なにしてんだよ」
ルトが睨むと、男達はやけにニヤニヤとした笑みで、女を見た。
…恐らく、私と同じくらいの歳の少女。
体を震わせ、目に涙を滲ませている。
少女がひとりでいるところを襲い、なんらかの形で金儲けしようとしたか何か、だろう。
「…その子から離れろ」
ルトが、剣を男達に向ける。
それを見て、彼らから笑みが消えた。
「うるせーよ。王子様気取りか、あん?」
…残念ながら、ルトは王子様という性格ではない。
そんな呑気な考えが浮かんだ瞬間、男のひとりがこちらへ殴りかかってきた。