月夜の翡翠と貴方
手を差し伸べられた少女は、まだこちらを警戒しているようだったが、静かにルトの手をとって、立ち上がった。
私も、ふたりのそばに行く。
「怪我ない?」
ルトの言葉に、少女は小さく頷いた。
「…ありがとうございます」
「いーえ。お嬢さんこそ、ひとりで歩いてたら危ないから、気をつけて」
「……………」
すると、彼女は俯く。
そこで、彼女の身につけているものに目がいった。
.....この村の人間にしては、上質なものを着ている。
明らかに使い古されていない、手入れの行き届いた真っ白い布。
被ったフードは、私のものとは全く違う、綺麗な刺繍がされたものだった。
フードから見える桃色の髪も美しく、肌も綺麗。
…まるで、何処かの貴族令嬢のようだ。
「…どうした?」
俯いた少女に、ルトが顔を覗き込む。
少女の背丈は、私より少しだけ低い。
突然近づいたルトの顔に、彼女は驚いた顔をした。