月夜の翡翠と貴方
「あ、ごめん」
「…いえ…………」
少女は顔を上げると、ルトの左腕を見て目を見開いた。
「あなた、その傷…………!」
「え?ああ、これは今ので出来たやつじゃないから、気にしなくていいよ」
そう言って、彼はへらっと笑う。
無理はしないで欲しい。
本当は、凄く痛いくせに。
「で、でも…!凄く血が出ているわ!ちゃんと手当したの!?」
青ざめた顔には、血を見慣れていないのがよくわかる。
「えっと……………うん」
嘘までついたぞ、この男。
今更格好つけても、と隣で呆れていると、少女は思わぬことを口にした。
「本当に……!?助けてくれたお礼に、私のお邸で手当をしても良いのよ!?」
お邸?
「えっ…………」
ルトの声に、少女がはっと口をつぐむ。
言ってはいけないことだったらしい。
その様子に、ルトは戸惑いながらも、それ以上は何も言わなかった。