月夜の翡翠と貴方
治療をしてくれるところがあるのなら、願ってもない話だ。
痛みに耐えている姿は、もう見たくない。
「ジェイド…」
頭上から声がするが、私は頭を上げるつもりはない。
...了承の言葉が、返ってくるまで。
私の頼みに、少女は上ずった声で、望みの言葉をくれた。
「………わかったわ。助けてもらえなければ、今頃私はどうなっていたかわからないし…」
その言葉に顔を上げると、私は笑って「ありがとうございます」と礼を言った。
「えっ………本当にいいの?まずいんじゃねーの?」
ルトが私達のやりとりを見て、慌てている。
「…いいんです。あなた方は危険な方ではなさそうですし。助けてもらった恩もありますから、頼まれては断れませんわ」
少女はこちらを見据えると、気然とした態度でスカートの裾を両手で広げ、貴婦人の挨拶のように、一礼した。
そして、凛とした声で、言ったのだ。
「私、セルシア・オリザーヌと申します」
と。