月夜の翡翠と貴方
格差、償い、引き裂かれた名
上層部に貴族家がある、というのは、その言葉通りだった。
セルシアについていき着いたのは、村の外にあった階段を上がったところにある、大きな邸。
その周りには、緑の多い手入れの行き渡った庭園があった。
薔薇が咲き誇るその空間は、下層の村の様子と違いすぎて、別世界のように感じる。
貧富の差を益々感じ、私とルトは戸惑いを隠せなかった。
そして、最も目を疑うのは、目の前で堂々と庭を歩く、この気品溢れる少女。
「どうです?綺麗でしょう?この薔薇、美しい自然で有名な、クジェータという国から輸入したものですの」
ふふ、と微笑むセルシアは、自分の家の価値を信じて疑わない、貴族令嬢そのもので。
「…綺麗ですね」
ルトの言葉に、セルシアは可憐に美しく微笑んだ。
「でしょう?」
…本当に、ここは貧困の村ディアフィーネなのか。