月夜の翡翠と貴方
「えーっと…まぁ、ちょっと色々と」
ルトが苦笑いして答える。
やはり。
傷口は深いらしく、二日痛みに耐えていたルトは、改めて凄いというか、なんというか。
もしかしたら二晩眠らなかったのは、見張りを含めても、痛みのせいで寝ように寝られなかったのかもしれない。
消毒液をつけられ、ルトは今度こそ痛みで顔をしかめた。
手当の間、ルトは耐えるように目をつむって椅子に座っていた。
私はその横に立って、その様子を見つめる。
…きっと、私に心配させないため。
ルトがこの二日間『痛い』と言わなかったのは、私に心配させないためだろう。
あとは、罪悪感。
仮に、矢が彼をめがけて飛んできたにしろ、私をかばったことで傷を負ってしまった。
気丈に振舞っていたのは、私が罪悪感を感じないでいいように、というのもあるのだろう。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「旅の方は大変ですなぁ」
ぐるぐるとルトの腕に包帯を巻きつけるノワードは、自身の白く長い髭を震わせた。