月夜の翡翠と貴方
「えっと…確かに、フードは取っとけって言ったけど…嫌なら、被ってもいいぞ」
「…え……」
…まさか、私の心境を、察した?
「……ですが…」
「いいんだよ」
私の言葉を遮り、できるだけ取ってて欲しいだけだから、と青年は付け足した。
………気遣い、なのだろうか。
彼ほどではないが、奴隷を気遣う主人は確かにいる。
今までの主人でもひとりかふたり、そんなひとがいた。
気性が、だいぶ落ち着いているのである。
…最も、そんな気遣いは本当に稀だが。
青年は純粋に、私を心配しているようだった。