月夜の翡翠と貴方


呼ばれたセルシアは、罰が悪そうにノワードから目を逸らす。

「だって……………」

「だってじゃありません。今日の夕方、ロディー様ご一行がいらっしゃるのですよ」

「わかってるわよ。もう…」

唇を尖らせるセルシアに、ノワードは溜息をついた。

そして、私とルトを見て、「では」と言う。

「また、明日ここへ来てくださいますか?薬の経過を見たいのです。私はいつも庭で水やりをしていますので、お声をかけてくだされば」

「わかりました。ありがとうございます」

ルトが礼をすると、ノワードは微笑んで私達を邸の外へ見送った。





「…ジェイド、大丈夫か?」


上層から下層への階段を降りる。

ぼうっとしていたら、ルトがそう声をかけてきた。


「…なにが?」

前を向きながら、平坦な声で返事をする。


「…なんか、気分悪そうだったから」


その言葉に、私は驚いてしまった。

気づいて、いたらしい。

「…大丈夫だよ。気にしないで」

まつげを伏せて、たん、たん、と音を鳴らして階段を降りる。


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