月夜の翡翠と貴方
「そーだなぁ…何か、話すことあるか?」
ルトの困ったような声が、頭に響く。
私はひとつ、話題として頭に浮かんだことを上げた。
「…ルトの、子供の頃の思い出」
私の返事に、彼は不機嫌そうな声を出した。
「…なに、いきなり」
「駄目ならいいよ。まぁ、前にリロザさんに結構聞いちゃったけど」
「リロザ!?」
ルトが泥酔した夜にね、と言うと、ルトは心底驚いたような顔をした。
「今度は、ルトの口から聞きたい。話せることだけでいいよ。リロザさんとミラゼさんとの思い出とか」
彼は少しばかり沈黙したあと、困ったような声で言った。
「…俺はいいけど、つまんないと思うよ?」
「いいよ。つまらなくないから」
そう答えると、ルトはやっぱり納得いかないような声をしながらも、「じゃあ」と言ってくれた。
そして、昼食までルトの思い出話を聞いた。
私は、静かに耳を傾けていた。
先程は、視覚、感覚が支配されて、頭がおかしくなりそうだった。
けれど、ルトの声で徐々に平静を取り戻していく。