月夜の翡翠と貴方
しかし、いくら年が近くても、私は奴隷で、彼は主人なのだ。
その優しさに、甘えてはいけない。
私はそれに、慣れてはいけない。
「……いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
私は本当に何ともないという風を装って、無表情のまま礼を言い、前を向いた。
「……………そうか」
そんな返事が小さく聞こえたところで、私達は雑踏から抜けた。
少し、辺りが静かになる。
歩きながら、ぼうっと抜けて来た雑踏を見ていると、青年がふと立ち止まった。
私も立ち止まり、彼を見上げる。
「…どうか、されたのですか」