月夜の翡翠と貴方


慌てて視線を下に向けながら、心に平静を保つよう言いかけた。


「…とにかく、どこにもいかないから。ルトは寝て。きついでしょう」

「どこにもいかない保証なんてないだろ。お前を抱いて寝るぐらいしないと、安心出来ないね」


…………!?

さらっとそんなことを言いのけたルトを、顔を上げて凝視した。

い、今、なにを言った?

思わず、自分の頬が熱くなるのを感じる。

私の顔を見たルトは、一瞬しまったというような顔をして、目線を逸らした。


「…隣、来い」


それだけ言って黙るルトに、ますます戸惑う。

ぎこちなく席を立つと、ゆっくりと寝台へ向かい、ルトの横に座った。

「……ここにいるから、寝て」

そう言うと、ルトは静かに寝台へ背を預けた。

「………ごめんね」

呟いた言葉に、ルトが視線だけ動かしてこちらを見上げる。


「…………なにが」

「…腕。あの矢は、ルトじゃなくて私を狙ってたんだよ」

「…うん」

包帯が巻かれた腕を見つめる。

私は、目を伏せた。


「……ごめん…」


巻き込んだのは、私。

怪我を負わせてしまったのも、原因は私。


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