月夜の翡翠と貴方
青年は、はぁ……と長いため息をついた。
瞳は、こちらを見続けている。
…何故だか、その表情はいかにも面倒だ、と言っているようだ。
「…あのさぁ、ひとつ言っとくけど」
人々は、私の髪を時折見ては、通り過ぎていく。
青年の整った顔立ちに、見惚れている少女たちも通り過ぎる。
…そのなかで彼は、私だけを見ていた。
「俺は、お前を奴隷扱いする気はないから」
…まるで、当然だというように。
そう言い放った彼は、呆れたようにため息をついた。
………え?
奴隷扱いする気は、ない…?
どういうことだ?
まるで、青年の言っている意味がわからない。
眉を寄せる私を見て、彼はやはり頭を抱える。