月夜の翡翠と貴方


むやみに訊いて良いものではないことが、わかる。


「お前だって訊いてこないだろ。ミラゼから聞いたこと以外には」

「……また、怒ると嫌だから」

「あれは怒ったってゆーか…まぁ、怒ってたか」


優しく、笑わないで。

何もかも、わかったような声をしないで。

…愛おしそうに、目を細めないで。


これ以上懐いたら、離れられなくなる。



「…寝て」


ルトから目をそらして、宿の壁を見つめる。

隣でルトが、ふ、と笑んだ気配がした。



「…ここにいろよ」


「…ん」


ルトが、目を閉じる。


…ここにいるよ。

どこにもいかない。

消えたりしない。

ルトの隣にいる。

だって、逃がしてはくれないんでしょう。

探してくれるんでしょう。

あのときの言葉が、たとえ誤魔化すための嘘でも。

貴方が私を、心の中で拒絶しようとも。


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